新しい術前視機能温存・網膜保護システム構築を目的に掲げ、トリアムシノロンアセトニド(TA)介入前後で評価可能な前房水に着目し、裂孔原性網膜剥離に関わるサイトカイン・ケモカインの測定を行った。 裂孔原性網膜剥離(RD)19眼に対し手術前日にTAを硝子体中に投与し、その前後での前房水サンプル解析を行った。まずベースラインのGM-CSF、IP-10、MCP-1、MIP-1b、VEGFが、黄斑円孔などのコントロール群に比べ、RD群では有意に上昇していることが確認できた。また、その中で、前房水MCP-1とIP-10は正の相関、MCP-1とMIP-1bも正の相関があることも判明した。 TA投与後の前房水IP-10、MCP-1、MIP-1bは、TA投与前に比べ、すべて有意に低下していることも確認できた。さらにTA投与後における、IP-10、MCP-1、MIP-1bの前房水・硝子体濃度の相関をみてみると、この三種の各ケモカインにおいて、前房水・硝子体濃度の正の相関が確認できた。また、TA投与していないRDの前房水・硝子体を解析すると、MCP-1に関しては正の相関が確認できた。 MCP-1は視細胞アポトーシスにクリティカルに関与していることはすでに証明されているが、今回のように臨床的にTA投与によりMCP-1の制御ができた報告はこれまで無い。さらにそのMCP-1とその他のサイトカイン・ケモカインとの関係も明らかにできた意義は大きい。MCP-1を制御することにより視細胞アポトーシス抑制に貢献でき、神経保護に繋がると考えられる。 RDを有する眼球内では、MCP-1とIP-10、MIP-1bは相互に高い相関を認め、共通の病態により制御されていると考えられた。
|