本年度は、研究課題I-2'電気刺激によるRGCの軸索再生の検討'及びII'電気刺激の効果とRGCに神経保護を有する薬剤との相乗効果の検討'III'電気刺激のプロトコールの確立及び適応の決定'に着手した。I-2についてはラットの視神経挫滅モデルを用いて電気刺激の軸索再生促進効果を検討した。結果、電気刺激を行ったラットの視神経の軸索のうち挫滅部を越えたのは平均21.5±3本、一方電気刺激をしていない群では平均3.3±1.6本で有意な差がみられ、電気刺激に視神経の軸索再生促進効果があることが認められた。また研究IIについては生体の酸化ストレスに対抗する防御酵素の一つであるPeroxiredoxin 6 (PRDX6)を候補薬剤とし、まずラット視神経切断モデルを用いてRGCに対するPRDX6の神経保護効果を検討した。Mutant投与群では生存RGCの細胞密度は747±122cells/mm^2(n=6)で、健常網膜の31%のRGCしか生存していなかった。一方、PRDX6投与群では、濃度依存的に生存率が上昇した。0.01μg/μl投与群では生存率は30%しかなかったが、0.1μg/μl投与群では42.5%と、Mutant投与群と比較して有意に生存率が向上し(P<0.05)、1.0μg/μl投与群ではさらに生存率が上昇し58%に達した(P<0.01)。今回の実験により、PRDX6は軸索切断されたRGCの生存を促進することが証明された。 研究課題IIIについては大阪大学医学部倫理委員会およびUMIN(登録番号000005049)に登録して研究に着手しはじめた。本年度の研究成果でPRDX6がRGCに対する新しい神経保護薬となる可能性が見いだせたことが一番意義のある成果であった。また臨床研究のプロトコールがまとまり新たに臨床研究を開始できることは電気刺激治療の臨床応用の確立に向けて大いにつながるものである。
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