研究課題/領域番号 |
22791658
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森本 壮 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (00530198)
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キーワード | 電気刺激 / 網膜神経節細胞 / 神経保護 / IGF-1 / 視神経 |
研究概要 |
本年度は、研究I"電気刺激による視覚再生のメカニズムの解明"および研究皿"電気刺激のプロトコールの確立及び適応の決定"について前年度に引き続き研究を進めた。研究1について本年度に行った研究は、血中のInsulin-likegrowth factor-1(IGF-1)が電気刺激によって血液網膜柵(BRB)を通過して網膜内に流入するかどうかについて検討した。ラットの左総頚動脈にrecombinanthuman IGF-1(hIGF-1)100μgを投与し、直後に左眼に電気刺激を1時間行った後、刺激終了後直ちに網膜を取り出し、処理した後にELISA法でhlGF-1のタンパク量を測定した。結果電気刺激を行った網膜でのhIGF-1の網膜タンパク1μg当たりの発現量は平均112pgで、sham刺激を行った網膜のhIGF-1の発現量は平均10pgであった。この結果から、電気刺激によって血中のIGF-1がBRBを通過して網膜内に流入することがわかった。この成果の意義は、まず網膜組織の電気的賦活によって血中のIGF-1がBRBを通過することを初めて見出したことと、BRBをどのように通過するのかそのメカニズムが解明されれば、薬剤を通過させる新しいドラッグデリバリーシステムとして経角膜電気刺激が応用される可能性がある。またこの成果は、研究H"電気刺激の効果と神経保護効果を有する薬剤との相乗効果の検討"ともつながっていく。 臨床研究IIIについては昨年度に引き続き電気刺激治療の治療効果について検討し、一定の成果を得た。外傷性性視神経症48例48眼に対し、電気刺激治療を1カ月毎に1クール3回行い、治療前の視力、視野と治療開始3か月後の視力、視野を比較検討した。結果、視力改善が15眼(31.3%)、視野の改善は11眼(30.5%)であり、悪化例はなかった。治療前の視力と治療後の視力改善との関連について検討した結果、光覚なしの症例は全例光覚なしのままであったが、それ以上の視力の例では視力の改善に有意な差はなかった。この結果は、少しでも網膜の機能が残存している例であれば、電気刺激治療によって視機能が改善する可能性があることを示すものである。本研究成果は、有効な治療法のない外傷性視神経症に対し、電気刺激治療が有用であるということを示唆するものであり、有効な治療法がなく、この疾患に罹患し苦しんでいる患者にとって非常に重要であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラットへのhIGF-1の投与方法の精度が上がり、測定のばらつきが解消された。次年度中には結果が出そろう予定である。臨床研究についても順調に症例数が増えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、策定した研究計画に基づいて推進していく予定である。臨床研究については順調に症例数が蓄積されている反面、神経保護のメカニズムの解明、薬剤との併用効果についての研究が遅れている。次年度は、メカニズムの解明、薬剤との併用効果についての研究の時間配分を増やし、着実に進めいていく。
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