研究概要 |
Multidrug resistance protein 4(MRP4)はABCトランスポーターファミリーに属する膜蛋白であり,生理物質や薬剤などの細胞外排泄を介して各組織の保護に働いている。我々はMRP4の網膜血管新生における役割を明らかにするために動物実験を行った。 1.研究内容 生理的網膜血管新生におけるMrp4の機能解析につきノックアウトマウスを用いた動物実験を行い以下の結果が得られた。 Mrp^<+/+>,Mrp4^<+/->,Mrp4^<-/->マウスにおいて、生後3日、7日、14日時点における網膜のフラットマウントを作成し血管内皮細胞のマーカーであるPECAM1による免疫染色を行ったところ、いずれのマヴスのいずれの時点においても網膜血管の形態に明らかな差は認められなかった。 (2)(1)の結果からMrp4の重要な基質の一つであるcAMPに注目し細胞内cAMP濃度を上昇させる薬剤であるフォルスコリンの腹腔内注射をMrp4^<+/+>マウスに行ったところdose-dependetに網膜血管の異常(網膜毛細血管の異常増生)が認められた。 (3)生後4,5日にフォルスコリン腹腔内注射を行い生後6日の網膜血管の形態を免疫染色で評価したところ、Mrp4^<-/->なマウスではMrp4^<+/+>,Mrp4^<+/->に比べて網膜毛細血管の異常増生が著しいことが判明した。 2.研究の意義 本研究は、cAMPを細胞外に排出する機能をもつMrp4が網膜血管新生において抑制的に働いているというエビデンスを功in vivoで初めて示した点で斬新である。 3.研究の重要性 今回の研究結果から、Mrp4が糖尿病網膜症をはじめとする網膜血管新生疾患において抑制的に働いている可能性が考えられ、網膜血管におけるMrp4機能評価やMrp4保護薬の開発を通じで将来の臨床応用への大きな足がかりになると思われる。
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