研究概要 |
種々の内因性及び外因性ストレスに対する生体反応は,生体恒常性維持機構の本態と考えられる。本研究は,光ストレスに対する網膜・視細胞の応答反応の分子機構を理解することで,将来の網膜疾患治療のための基礎的知見を得ることを目的とする。 本年度は、以下の実験を行った。 1.ラット網膜光傷害のアクションスペクトラムに関する実験 ・既報(Free Rad Biol Med 42(12),2007)に準じて,暗環境(5-10ルクス,12時間on:12時間off)で出生したSprague-Dawley (SD)ラットを同環境下で4週間飼育し,実験に用いた。 ・波長380nmから800nmまで,20nm毎に半値幅10nmのフィルターセットを作製した。 また,今年度はより波長の短い紫外線領域の光による網膜障害についても実験を追加した。 ・全身麻酔下にラット片眼に光照射を行った。角膜表面の照射量を測定し,ラット角膜(Merriam et al., IOVS 2000)および水晶体(Gorgels and van Norren, Vis Res 1992)の分光特性から網膜面上の照射量(J/cm^2)を算出した。 ・各フィルター毎に,1~340J/cm^2程度の網膜照射量でラットの片眼に光照射を行った。1回照射に加えて,2回の分割照射による生体反応性の違いについても検討した。 ・網膜電図による網膜機能測定,光学顕微鏡(外顆粒層厚測定)による網膜形態評価により網膜傷害を定量化した。 2.ヒト眼内レンズの光線透過スペクトラム測定と網膜光傷害度の算出 ・各種眼内レンズフィルターの光線透過度を分光光度計により,高精度に測定した。 ・眼内レンズフィルターを透過した太陽光線による網膜急性傷害度(Blue-light irradiance)について,算出した。
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