自己の表皮細胞から形質転換した角膜上皮細胞は、培養角膜上皮移植における有用な細胞源となる可能性がある。本課題の目的は形質転換に関与する因子の決定であり、22年度の研究ではまず、マウス表皮細胞(MKC)を用いた形質転換モデルの作製を試みた。角膜特異的分化マーカーであるケラチン12(K12)の発現によりGFPを発現するK12Cre/ZEGマウス由来のMKCを無血清培地(CnT-07)で培養し、プラスチック、羊膜、またはWTマウス(C57BL/6)より摘出した角膜実質上に播種(1x10^4/cm^2)、Ca^(++)(0.4mM)を添加した無血清培地(CnT-30)またはSHEM(5%FBS)で4日間培養後、GFPの発現を蛍光顕微鏡で確認した。その結果、角膜実質上に播種したK12Cre/ZEGマウス由来の細胞にGFPの発現が認められた。これらGFP陽性細胞は角膜周辺部に集中して存在した。GFPの発現は無血清培地またはSHEMのどちらの培地を用いた場合にも認められた。一方で、プラスチック上、羊膜上ではGFP陽性細胞は認められなかった。また、これらの環境でMKCを正常角膜上皮細胞と混和して培養した場合にもGFPの発現は認めなかった。以上のことから、MKCが、K12を発現する角膜上皮様細胞に形質転換可能であることが示唆された。形質転換は角膜周辺部の細胞外基質または輪部由来液性因子が必要であり、また、角膜上皮細胞の刺激だけでは誘導されない可能性が示唆された。現在、形質転換効率の定量を試みているところである。今後、遺伝子発現解析アレイ(affimetrix)を用いた解析を行うことで、形質転換に関与する因子の同定を行うことが可能であると考えられる。
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