研究概要 |
C57BL/6マウスに26G針にて角膜上皮に擦過傷を作ったのちに緑膿菌由来のLPS 1μgを点眼した。LPS点眼後6時間および24時間後にマウスを安楽死させ,角膜を摘出した。摘出した角膜はOCTコンパウンドに包埋し,凍結切片を作成した。好中球およびマクロファージに対する抗体を用いて免疫染色し,角膜へ浸潤した炎症細胞数を定量化した。好中球は6時間から角膜内へ浸潤して,24時間後もほぼ同数であった。マクロファージは,6時間で浸潤が有意に増加したが,24時間後にさらに増加していた。 また摘出した角膜をホモジナイズして,角膜に含まれる23種類のサイトカイン,8種類のケモカインを網羅的にmultiplex bead array法を用いて検討した。その結果,LPS角膜炎において,炎症性サイトカイン(IL-1α, IL-1β, TNF-α, IL-6),Th1サイトカイン(IL-12, IL-15, IL-18),ケモカイン(KC, MCP-1, MIP-1β, RANTES, MIP-2, MIG),成長因子(G-CSF, M-CSF, PDGF-BB, VEGF)の発現が上昇した。これらのうち,IL-6, IL-12, IL-18, MCP-1, M-CSF, PDGF-BBはLPS点眼後6時間のみで上昇し,これら以外は6時間後と24時間後共に上昇が認められた。またTh2サイトカインであるIL-13の発現のみ24時間後に減少した。これらの結果より,LPS刺激後の種々の液性因子の発現時期が異なり,生体防御・炎症の発症や維持に異なる役割を果たす事が示唆された。 また緑膿菌の臨床分離株を用いて,マウス緑膿菌角膜炎モデルを作成した。C57BL/6マウスおよびBALB/cマウスに26G針にて角膜上皮に擦過傷を作ったのちに,種々の濃度の緑膿菌を点眼し,経時的に臨床所見を観察した。その結果,5×10^6 CFUの濃度の緑膿菌により強い角膜炎が安定して誘導されることが分かった。C57BL/6マウスにおいては,感染1日後は輪状膿瘍の所見を呈し,3日後は角膜全体が白濁し,5日後は角膜が穿孔するマウスが多く見られた。一方,BALB/cマウスにおいては,同濃度の緑膿菌を感染させてもC57BL/6に比し,角膜炎の臨床症状が軽度であり,マウスの系統により臨床所見に差が認められた。現在緑膿菌感染後の角膜における炎症細胞や生細菌数,サイトカインやケモカインなどの発現を検討している。
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