研究課題/領域番号 |
22791675
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
畑中 裕司 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (00353277)
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キーワード | 眼医工学 / 画像解析 / 眼底 / 緑内障 / 糖尿病網膜症 / 高血圧性網膜症 |
研究概要 |
眼科的疾患の緑内障と、全身疾患の目の合併症である糖尿病網膜症と高血圧性網膜症の診断支援に関連する研究開発を行った。これまでに開発した視神経線維層欠損(NFLD:nerve fiber layer defect)の自動検出法を利用して、他の眼科的検査の結果と連携した緑内障のリスク推定アルゴリズムの開発にとりかかった。緑内障のリスクの高い79症例とリスクの低い81症例に対して、収縮期血圧、拡張期血圧、裸眼視力、近遠視度数、屈折率、角膜曲率、角膜厚、眼圧、隅角のグレード、PPAの有無からなる10の検査項目と、NFLDの自動検出結果を合わせて、人工ニューラルネットワーク(ANN:artificial neural network)、サポート・ベクタ・マシンによる機械学習によるリスク推定アルゴリズムを構築したところ、ANNで感度が87%、特異度が77%の結果を得た。また、糖尿病網膜症の診断所見の一つである毛細血管瘤の自動検出アルゴリズムの高度化を進めた。従来の検出アルゴリズムの誤検出数の低減を図るために、126種類の画像的な特徴量を定義して、主成分分析によって特徴量空間を28次元に削減した後にANNを用いて毛細血管瘤と誤検出に自動分類した。25枚の眼底画像に対する検出実験を行ったところ、検出率が68%のとき、画像単位の誤検出数が26個から15個に減らすことに成功した。さらに、高血圧性網膜症の診断支援のために細動脈狭窄を自動検出するアルゴリズムの開発を進めているが、従来のアルゴリズムでは、主幹動静脈の認識精度が75%であり、精度の向上が必要であった。特に、動静脈の分類処理に課題を残していたことから、動静脈の認識に用いる特徴量を従来のカラーの画素値に加え、カラー画像の3成分のコントラスト、血管の検出に用いている二重リングフィルタとブラックトップハット変換による出力値の計5種類を特徴量として加えた。その結果、主幹動静脈の認識精度が85%に向上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では、緑内障、糖尿病網膜症、高血圧性網膜症の3つの疾病の診断支援を対象としている。緑内障に関しては計画よりも進んでいる。糖尿病網膜症に関しては、毛細血管瘤の自動検出するアルゴリズムの開発を優先したため、出血と白斑の自動検出法の改良が遅れがちである。また、高血圧性網膜症については、主幹動静脈の認識アルゴリズムの改良に難航しており、遅れがちである。
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今後の研究の推進方策 |
順調に進んでいる緑内障のリスク推定については、C/D比の自動計測アルゴリズムを加えた評価実験を追加し,その有効性を確認する。糖尿病網膜症については、毛細血管瘤の自動検出アルゴリズムの知見を出血の自動検出アルゴリズムにも適用できる可能性があるので試みる。高血圧性網膜症については、異常部位を自動検出するアルゴリズムを開発する計画から、動静脈工経費を自動計測するアルゴリズムの開発に計画を変更し、定量的に計測するツールを用意することによって、診断を支援することにする。
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