加齢黄斑変性のモデルマウスを作成するためにマウスに網膜光凝固にて脈絡膜新生血管を作製し、本来免疫抑制物質として同定されていたcytotoxic T lymphocyte antigen-2 (CTLA2) alphaが眼組織において角膜や網膜色素上皮といった血管新生を阻害している部位で特異的に発現していることを発見した。そこでこのCTLA2alphaに免疫抑制効果以外に血管新生抑制作用があるのではないかとの仮説のもと全身投与による脈絡膜新生血管の抑制効果を免疫組織化学的に検討した。また同様の血管新生抑制作用の検討をin vitroの評価系として血管内皮細胞の培養系を用いて行った。その結果CTLA2alphaはモデルマウスにおいて優位にCNVの発生を抑えた(p=0.01)。またマウス血管内皮細胞の増殖を有意に抑制していた(p=0.0286)。加齢黄斑変性は先進国における社会的失明原因の首位を占める疾患であり、その克服は眼科領域に置いて非常に重要な課題である。この研究成果は加齢黄斑変性において、劇的な視力低下をもたらす原因である脈絡膜新生血管(CNV)の発生を抑制することによる新たな治療薬の候補となる。 また、さらに脈絡膜新生血管の瘢痕化のコントロールを目的としてヒト網膜色素上皮細胞であるARPE19と家兎の網膜色素上皮細胞の培養細胞を用いてPPARgammaによる上皮間葉移行による瘢痕形成の抑制作用を検討しており、いくつかのPPARgamma作用薬にてin vitroでの瘢痕抑制作用を確認している。これらは加齢黄斑変性の脈絡膜新生血管の瘢痕化による視力低下を予防できる可能性があると考えられる。
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