眼組織において病的新生血管は重篤な視力低下につながり、血管新生の制御は重要課題となる。眼科領域では脈絡膜新生血管に起因する加齢黄斑変性症に対して、抗VEGF抗体が治療薬として用いられているが、正常血管に対する障害や血管閉塞の誘発など副作用の報告も少なくない。そのためVEGFとは別の観点からの血管新生抑制が望まれている。 α9インテグリンは種々の細胞外マトリックス成分の受容体として働き、炎症細胞や血管内皮細胞の遊走・増殖に重要な働きを持つことが知られている。α9インテグリンのリガンドとして知られるOPN、TN-C、ルミカンは新生血管促進作用を持つ事が予想される。OPNに関しては角膜新生血管に対する促進作用があることを研究代表者は証明している。 脈絡膜新生血管や網膜新生血管についてもOPNが促進作用をもつと予想され、さらには同じα9インテグリンのリガンドとなるTN-Cやルミカンでも血管新生促進作用が予想される。 病的新生血管の制御方法として、OPN、TN-C、ルミカンといった多様なサイトカインに対する中和抗体を用いた治療法が期待できる。 血管新生に対するOPNの促進効果の確認とOPN活性の抑制による効果の確認 血管新生培養キットを用いた。OPN由来のSVVYGLRペプチドをキット内の血管新生専用培地に0.02μg/mlの濃度で添加して、新生血管を培養した。ペプチド添加群ではペプチド非添加群と比較して間で管腔の形成が促進されているか検討した。また、ポリクローナル抗体を作成して、VEGFに対するbevacizumabと同様に、OPN活性を抑制することを確認した。フィーダーとして用いる線維芽細胞に、OPNノックアウトマウス胎仔由来線維芽細胞を使用し、NHDFとHUVECの共培養と同様の実験を行い、管腔形成に対するOPNの影響は、HUVECそのものから由来するOPNが関連するのか、フィーダーとなる線維芽細胞からのOPNが外因となるのかを確認した。
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