本研究の目的はビタミンCノックアウトマウスの網膜変性を解明し、網膜変性疾患とビタミンCとの関連を明らかにし、その治療・予防の可能性を探ることである。 平成22年度は紫外線(UVB)負荷による網膜変性について解析を行った。SMP30ノックアウトマウス(ビタミンCノックアウトマウス)を生後1か月で離乳し、ビタミンCを充分に与える群(ビタミンC投与群)と、壊血病を発症しない必要最低限のビタミンCのみの群(ビタミンC欠乏群)の2群に分け飼育を行った。また野生型マウスを通常の条件下で飼育した。この3群に対して16週齢で紫外線負荷実験を開始した。照射は片眼にミドリンP散瞳下でUVB(波長302nm、2mW/cm^2)を100秒×6回行い、最終照射の48時間後に眼球を摘出し組織学的検討を行った。非照射の片眼をコントロールとした。その結果、ビタミンC投与群・欠乏群、野生型ともに非照射眼と比べて外顆粒層の細胞数減少がみられた。内顆粒層の細胞数の減少は認められなかった。照射眼と非照射眼の外顆粒層細胞数の比は92.0±11.1%、75.1±16.8%、89.9±9.5%で、ビタミンC欠乏群で有意な減少がみられた。このことから紫外線によって網膜内に生じる酸化ストレスに対してビタミンCが保護的に働くことが示唆された。 今年度は網膜変性における蛋白やRNAの解析を行い、酸化ストレスがどのような機序で網膜変性をきたすのか、また他の抗酸化作用をもつ物質で網膜変性を抑制できるのか明らかにしていく予定である。これらが明らかになれば、酸化ストレスが関与していると考えられている、加齢黄斑変性、網膜色素変性症の病態の解明や予防方法・診断後網膜変性を進行させないための治療方法の解明に貢献できると思われる。
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