研究課題
本研究の目的はビタミンCノックアウトマウスの網膜変性を解明し、網膜変性疾患とビタミンCとの関連を明らかにし、その治療・予防の可能性を探ることである。平成23年度は前年度に続き、紫外線(UVB)負荷による網膜変性について解析を行った。SMP30ノックアウトマウス(ビタミンCノックアウトマウス)を生後1か月で離乳し、ビタミンCを充分に与える群(ビタミンC投与群)と、壊血病を発症しない必要最低限のビタミンCのみの群(ビタミンC欠乏群)の2群に分け飼育を行った。また野生型マウスを通常の条件下で飼育した。この3群に対して16週齢で紫外線負荷実験を開始した。照射は片眼にミドリンP散瞳下でUVB(波長302nm、2mW/cm2)を100秒×6回行い、最終照射の48時間後に眼球を摘出し組織学的検討を行った。非照射の片眼をコントロールとした。その結果、ビタミンC欠乏群ではビタミンC投与群や野生型と比べてより強く外顆粒層細胞数が減少した。さらにビタミンC欠乏群ではビタミンC投与群や野生型と比べて強い水晶体混濁(前嚢下白内障)を生じた。白内障面積率で59.3%±10%vs.32.2%±11.7%or29.0%±9.0%;P<0.01であった。このことから紫外線によって網膜内および水晶体内に生じる酸化ストレスに対してビタミンCが保護的に働くことが示唆された。これらの結果から白内障や網膜変性の病態におけて酸化ストレスが関与している可能性が示された。またこれらの疾患の予防や治療にビタミンCなどの抗酸化物質が有効である可能性が考えられた。
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Experimental Eye Research
巻: 94 ページ: 85-89
10.1016/j.exer.2011.11.010