本研究目的は、水晶体混濁である白内障をScheimpflugの原理を応用することで、3次元に混濁情報の評価を行い、視機能との関性を明確化することである。 本年度の目的は、解析ゾーンを細分化し、部位別の360度方向混濁情報を数値化し、再現性を確認することと、これらの瞳孔領に対応した部位の混濁情報から視機能との関係を明らかにすることであった。 健常眼および白内障眼に対し、水晶体核にあたる中心部のみの濃度値(nuclear lens density)と奥行き情報を含む解析径1mm径と3mm径内における360度の平均濃度値(average lens density)、を解析し、視力との関係を調査した。その結果、回帰分析において各パラメータは矯正視力と有意な関係を示し、解析径3mmの方が高い決定係数が得られた。つまり、核だけでなく瞳孔径内で3次元的に解析した方が、視力の予測には有用ということを検証できた。 次に部位別混濁情報評価と再現性の評価を行った。再現性の評価には、1回目と2回目計測の平均差とその一致限界から評価するBland-Altman plotを用い、領域ごとに解析した。その結果、水晶体核、皮質、嚢における再現性のデータが得られ、次年度以降に実施する研究に活用できる基礎データを得ることができた。 次年度より、これらのデータを生かして3次元的に白内障眼の混濁の程度・部位に分類し、統計処理する。そして、視機能との関係の明確化を目指す。また、このような目的を達成する上で、光学シミュレーションと小数例における白内障眼の縦断研究を行うことが、望ましいと思われた。そこで、光学設計ソフトを用いて網膜像を推定できるようなヒト眼球モデルを作成した。また、有水晶体眼内レンズ挿入眼は、比較的白内障の進行が早い例もいることから、23年度は、これらの症例も対象として研究を行う予定である。
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