糖尿病網膜症は常に失明原因の上位を占めており、その予後改善策を開発することは社会的にも意義が大きい。その予防に役立つ介入方法の開発は、多くの糖尿病患者の予後を決めることにつながる可能性があり、重要である。 そこで、糖尿病網膜症におけるHIF-1αの役割を見るために、申請者はまず、マウスにストレプトゾトシンを注射することで膵臓のランゲルハンス島β細胞を破壊する1型糖尿病モデルを作成した。そしてそのモデルマウスの網膜において、HIF-1αにより調節され得る血管内皮増殖因子(Vascular endothelial growth factor;VEGF)とアンジオテンシンIIの発現の変化を解析した。いずれも上昇していた。これらのシグナルが網膜の血管における炎症反応と、神経変性による視機能低下に対して影響を及ぼすことは知られており、本モデルにおけるこれらのシグナルの上昇が確認されたことは、今後の研究に必要であった。 次に、HIF-1αが網膜特異的に欠損したマウスを作成した。このマウスでは、胎生期より網膜の中間周辺部~周辺部においてHIF-1αが欠損する。本マウスにおいて網膜細胞がほぼ正常に発達することを確認した。また、成体マウスの視機能を客観的に解析する網膜電図の解析を始めた。網膜特異的HIF-1α欠損マウスの視機能を測定し、解析中である。 今後は網膜特異的HIF-1α欠損マウスに元来ある網膜の変化をさらに解析した上で、本欠損マウスでストレプトゾトシンの注射による糖尿病モデルマウスの作成を進め、その網膜および視機能の変化とそのメカニズムを解析する予定である。
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