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近年、造血幹細胞移植(HSCT)は白血病、重症再生不良性貧血などの造血幹細胞の異常に起因する血液疾患に対する治療法として確立されている。慢性移植片対宿主病(cGVHD)は移植後100日以降に生じるとされる。慢性移植片対宿主病の眼合併症としてドライアイ(DE)、マイボーム腺機能不全が多い。cGVHDによるDE患者に対し、(1)細隙灯顕微鏡検査(2)シルマーテスト(3)フルオレセイン・ローズベンガル染色による角結膜上皮障害のスコアリング(4)涙液層破壊時間の測定(5)非接触型マイボグラフィー(6)confocal microscopyを施行し、造血幹細胞移植後、DEを発症しなかった症例と比較した。
cGVHDによるDE患者の眼表面、涙液分泌、マイボーム腺はHSCT後DEを発症しなかった症例と比較し高度に障害されていた。Confocal microscopyによるマイボーム腺の観察において、重症DE症例ではマイボーム腺の高度な萎縮とマイボーム腺周囲の高度の線維化、炎症細胞の浸潤を認めた。またマイボーム腺周囲の高度な線維化は、DE発症後早期に観察された。DE群で他臓器にもcGVHDを認める症例は、他臓器にcGVHDを認めない症例と比較しマイボーム腺の形態は有意に萎縮し線維化が高度だった。他臓器にcGVHDのないDE群のマイボーム腺の形態はHSCT後DEを発症しなかった症例と類似していた。
cGVHD症例のマイボーム腺の形態については今まで報告がなく、今回初めて明らかになった。今回の研究により、HSCT後confocal microscopyによるマイボーム腺の観察はHSCT後の眼および全身cGVHDの予後の予測に有用である可能性が示唆された。
今後は、HSCT後confocal microscopyを用いマイボーム腺を継時的に観察することや免疫抑制剤治療前後での眼表面の解析等も検討予定である。
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