研究課題/領域番号 |
22791690
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
番 裕美子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80407105)
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キーワード | 重症ドライアイ / 免疫抑制剤治療 / マイボーム腺 / 炎症 / 眼表面評価 |
研究概要 |
慢性移植片対宿主病(以下、慢性GVHD)によるドライアイ患者のマイボーム腺をconfocal microscopy・非接触型マイボグラフィーを用いて観察を行い、造血幹細胞移植後ドライアイを発症しなかった症例と比較検討し、全身慢性GVHDの有無との関連も併せて評価した。 confocal microscopyによる観察では、慢性GVHDによるドライアイ患者のマイボーム腺は、高度に障害されており、重症ドライアイ患者ではマイボーム腺の高度な萎縮とマイボーム腺周囲の高度の線維化、炎症細胞の浸潤を認めた。非接触型マイボグラフィーによる観察では、慢性GVHDによるドライアイ患者のマイボーム腺は、高度の腺構造の消失・破壊を認めた。 慢性GVHDによるドライアイ患者のうち他臓器にも慢性GVHDを認める症例は、コントロール群と比較し、マイボーム腺は有意に萎縮し線維化が高度だった。慢性GVHDによるドライアイ患者で他臓器に慢性GVHDを認めない症例のマイボーム腺は、造血幹細胞移植後ドライアイを発症しなかった症例に類似していた。慢性GVHDでは、免疫応答を伴う高度な線維化によってマイボーム腺機能不全が生じる事が示唆された。 今回の研究で初めて、造血幹細胞移植後の症例のマイボーム腺の像が観察された。慢性GVHDによるドライアイのマイボーム腺の像は、過去に報告されている涙腺の組織像に類似しており、眼慢性GVHDによる病的線維化状態がマイボーム腺にも惹起されている可能性が示唆された。非侵襲的検査であるconfocal microscopyを用いたマイボーム腺像の評価が、ドライアイの重症度や造血幹細胞移植後の全身予後の評価の指標となる可能性が示唆された。 今回の研究内容を、眼科雑誌Molecular Visionに発表し、慶應義塾大学の医学博士を取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
慢性移植片対宿主病によるドライアイ患者の眼表面について、非接触型マイボグラフィー・confocal microscopyを用いて涙液油層・マイボーム腺を中心とした眼表面の状態を観察し、論文にまとめた。 研究期間中体調が悪い期間(平成24年8月出産予定)があり、Sjogren症候群・Stevens-Johonson症候群・眼類天疱瘡の眼表面の評価が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
慢性移植片対宿主病による重症ドライアイ患者の局所免疫治療前後での涙液油層・マイボーム腺の構造・炎症細胞浸潤を含めた眼表面・涙液動態を従来の治療法を施行したコントロールと比較して評価し、治療指針を確立する。 Stevens-Johonson症候群・眼類天疱瘡による重症ドライアイの眼表面について、DR-1[○!R]、非接触型マイボグラフィー、confbcal microscopy等を用いて眼表面を評価する。 Sjogren症候群のconfocal microscopyを用いたマイボーム腺像については、さらに、DR-1[○!R]、非接触型マイボグラフィー、confocal microscopy等を用い、臨床データを集積する。 申請者は平成24年8月に出産予定で、平成24年度もできる限り研究を進めるが、平成24年度の科研費は産休・育休制度を用いて、平成25年度に使用する予定である。
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