近年増加しているII型糖尿病およびメタボリックシンドロームに伴う眼合併症の中にドライアイがあるが、失明に関わらないとの認識より今までメタボリックシンドロームとドライアイについての研究報告はほとんど行われてこなかった。涙腺の組織学的検討を行ったものは動物モデルを使用したものを含めて皆無である。そこで、まず初年度は、II型糖尿病モデルマウスに高脂肪食負荷をかけメタボリックシンドロームモデルを作成し、涙液分泌機能の低下および涙腺、眼表面組織学的変化を検討することを目的とした動物実験を計画した。II型糖尿病モデルマウスとして雄のKK-A^Yマウスを用いることとし、7週齢から標準食群と高脂肪食負荷群(メタボリックシンドロームモデル)(60%FAT:ラード)の2群にわけ飼育実験を開始し、14週目(21週齢)で解剖した。正常比較対象として同週齢のB6マウスを用いた。経時的な体重測定により高脂肪食負荷群での有意な体重増加を確認できた。また、投与14週目での糖負荷試験、血液データ採取により、耐糖能異常を確認し、メタボリックシンドロームの状態となっていることを確認した。期間中涙液分泌能の経時的変化を追ったところ、高脂肪食負荷飼育群では標準食群と比べて負荷開始後3カ月時点で涙液分泌量が有意に減少していることが確認できた。さらに、摘出涙腺のヘマトキシリンエオジン染色では高脂肪食負荷群で著明な炎症細胞の浸潤が認められた。酸化ストレスマーカー(80H-dG)染色では高脂肪食負荷群で強い染色を認めた。このように、メタボリックシンドロームモデルマウスによる涙腺機能低下の証明ができた。またその機序として炎症細胞の浸潤および酸化ストレスが関与していることが示唆された。
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