本年度は大阪市内のある本社企業健診にてドライアイ検診を実施し、その結果からドライアイ診断基準に基づくドライアイの有病率および危険因子を導きだし、2012年2月に開催された角膜カンファランス2012にて本研究結果を「大阪スタディ」として報告することができた。 対象は一部上場企業一社の本社に勤務する672人に対し、メールにてドライアイ検診の施行を通知し、同意の得られた人にアンケート、シルマー試験、生体染色を実施し、無記名式で回答を取得した。アンケートでの質問項目は、自覚症状の種類と強さ(4段階評価)、年齢、性別、身長、体重、VDT作業時間、勤務環境、全身疾患や喫煙の有無、コンタクトレンズ(CL)使用歴とした。ドライアイの診断は2006年に改正されたドライアイ診断基準に基づいた。 ドライアイ検診に対する有効回答者数は561名(男性:374名、女性:187名)、回答率は83.5%であった。ドライアイ確定例は男性30名(8.0%)、女性35名(18.7%)、全体で65名(11.6%)、ドライアイ疑い例は男性195名(52.1%)、女性108名(57.8%)、全体で303名(54.0%)であった。 ドライアイ確定例+疑い例の男女オッズ比は1.64と女性に多く、CL使用のオッズ比は1.38であり、CL使用者に有意にドライアイが多く認められた。 本研究の結論としてはVDT作業者におけるドライアイは、ドライアイ疑い例が多く、その危険因子は、女性、CL使用者があげられた。 本研究の意義は、この企業が三次産業に分類され、有効回答率およびドライアイ検診参加者は本社全体の83.5%であるため、疫学的にサンプル抽出が成功したことから、日本の第三次産業従事者のドライアイ罹患率をある程度正確に導き出すことに日本で初めて成功した点が重要である。
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