研究課題
下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)は27または38アミノ酸残基からなる神経ペプチドである。我々はPACAP遺伝子欠損(KO)マウスを飼育・維持する過程において角膜表面を長期的に観察したところ、10週齢未満の若齢個体では角膜に変化は認められなかったが、20週齢以上の特に雌性個体において高頻度に角膜表面の角質化が認められた。そこで角膜角質化の原因として涙腺と涙液分泌量に着目した。PACAP KOマウスの涙腺は病理学的に正常であったが、涙液量を綿糸法により測定した結果、生後10週齢以前から涙液量の減少が認められた。以上の結果から、PACAP KOマウスでは角質化が生じる以前に涙液量が減少していることが明らかになった。そこでマウス涙腺組織におけるPACAPおよびその特異的受容体(PAC1R)発現をRT-PCR法により解析したところ、PACAPおよびPAC1R mRNAが涙腺組織に発現していることが確認された。さらにPACAPおよびその特異的受容体(PAC1R)の涙腺における組織分布を免疫組織化学的に観察した。PAC1R免疫陽性反応は涙腺腺房細胞の基底部に認められ、PACAP免疫陽性反応は腺房周囲の副交感神経に局在した。次にPACAPの涙液分泌に与える影響を評価するため、PACAPの点眼投与実験を行なった結果、PACAP点眼開始15分から45分にかけて有意な涙液量の増加が認められた。この反応はPACAP6-38(PAC1Rアンタゴニスト)前投与により抑制された。以上の結果から、PACAPは涙液分泌促進作用を有していることが明らかになった。よって次年度ではPACAPによる涙液分泌促進機構に関するシグナル経路と、水輸送に関わるチャネル分子であるアクアポリンに着目した解析を行う予定である。
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http://www10.showa-u.ac.jp/~anat-1/index.html