研究課題
ドライアイは涙液の量的または質的な異常により引き起こされる角結膜上皮障害と定義される疾患である。現在、ドライアイ治療法として人工涙液や自己血清点眼治療などが行なわれているが効果は短期間あることから、より効果的なドライアイ治療薬の創出が切望されている。また、ドライアイの原因解明および治療薬を開発するためにはドライアイモデル動物を用いた解析が必要不可欠であるが、現在までに有用なドライアイモデル動物は十分に確立されていないのが現状である。申請者はPACAP遺伝子欠損(KO)マウスの飼育・繁殖の過程において、20週齢以上の特に雌性個体において高頻度に角膜表面の角質化と涙液量の減少が生じることを見出した。このようにPACAPKOマウスではヒトのドライアイと類似したドライアイ様症状が認められたことから、マウス涙腺組織におけるPACAPおよびその特異的受容体(PAC1R)発現を解析したところ、PACAPおよびPAC1Rが涙腺組織に発現していることが確認された。さらにPACAPの涙液分泌に与える影響を評価するため、PACAPの点眼投与実験を行なった結果、PACAP点眼開始15分から45分にかけて有意な涙液量の増加が認められた。この反応はPACAP6-38(PAC1Rアンタゴニスト)前投与により抑制された。以上の結果から、PACAPは涙液分泌促進作用を有していることが明らかになった。さらにPACAP点眼後の涙腺組織を用いてシグナル伝達経路を解析した結果、PACAPはPAC1Rを介してcAMP/PKへ経路を活性化させ、さらにアクアポリン5のリン酸化を誘導することにより涙液分泌を促進していることが明らかになった。以上の結果から本研究課題により、PACAPKOマウスは新規ドライアイ様モデル動物であること、さらにPACAPが涙液分泌促進効果を有することが示唆された。
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