昨年度から引き続き、内因性ぶどう膜炎の末梢血単核球(PBMC)を用いて、PBMCから産生される炎症性因子の濃度と臨床経過の相関の解析を行った。Vogt-小柳-原田(VKH)病については症例数を増やして、昨年度までの結果の確実性を確認する作業、および昨年度までに有意差のある結果が得られなかった、コンカナバリンA(ConA)刺激下のPBMCにベタメサゾンを添加した際のサイトカイン産生量と臨床経過との相関を調べる作業を行った。新たに初発VKH病患者10例について実験を行い、総患者数は30例となった。具体的には各患者からステロイド薬全身投与前にPBMCを採取し、ConAおよび各種濃度のベタメサゾンを添加して24時間培養したのち、上清を採取し、IFN-γ、TNF-α、IL-2、IL-6、IL-10、IL-17の濃度をフローサイトメトリーで測定した。 結果として、上清のIL-17の濃度が高い患者は低い患者と比較して、1)発症時年齢が高い、2)矯正視力が1.0以上に回復するまでの期間が長い、3)総ステロイド薬投与量が多い、という点について、有意差をもって示された。しかしながら、ベタメサゾン添加時のサイトカイン産生量で臨床経過(再発、遷延、ステロイド薬総投与量、夕焼け状眼底、最終矯正視力、髄液細胞数など)と関連する項目は見出せなかった。 以上の結果から、VKH病においてPBMCのIL-17産生は、現状のステロイド薬による治療が行われた場合の予後を予測するマーカーになる可能性が見いだされた。今後、IL-17産生を指標として、遷延化する可能性の高い患者のステロイド薬投与法や治療薬の変更を検討し、VKH病全体の治療成績を向上させることを目標に研究を進める予定である。
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