研究の全体構想である、重篤な眼疾患であるぶどう膜炎や術後炎症の病態をより詳細に把握し、最適な診断法・治療法を確立するために、人眼の前房内に含まれるタンパク質や種々の生体分子の組成に関する情報を、非接触・非侵襲で得るための装置の開発を行った。 平成24年度は、そのプロトタイプを完成し、動物実験および臨床研究を行った。これと平行して、動物実験で使用する前房内炎症惹起物質である、エンドトキシン溶液およびエンドトキシンを溶解させたヒアルロン酸ナトリウム溶液のエンドトキシン定量実験の成果を平成24年5月に米国Fort Lauderdaleで行われた2012 The Association for Research in Vision and Ophthalmology (ARVO) Annual Meetingで「Determination of endotoxin concentration in hyaluronic acid by the light scattering method」として発表した。現在ISO(国際標準化機構)では、眼科手術用ヒアルロン酸ナトリウム製剤中のエンドトキシン濃度の規制値強化を検討しており、今回の報告内容はその新しい規制値の根拠やその測定方法、測定精度の向上に寄与する内容である。 これらに合わせて、本研究が臨床上対象とする感染性および非感染性ぶどう膜炎疾患、術後炎症疾患および非炎症性前眼部疾患の病態や臨床像を明らかにするために、市販の非接触・非侵襲前眼部観察装置である前眼部光干渉断層計を用いた臨床例の観察、解析を行い、学会発表を行った。
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