研究概要 |
加齢黄斑変性は米国では65歳以上で失明率が最も高い眼疾患であるが、日本でも急速な高齢化、生活の欧米化、診断装置の普及によって患者数は急増しており、その原因解明と予防・治療法の開発が急がれている。近年、加齢黄斑変性の発症リスクを高める要因として、習慣要因として喫煙歴、遺伝的要因としてHtrA1のプロモーター領域とARMS2の一塩基置換(SNP)が報告されている。本研究は、このリスク遺伝子を導入したトランスジェニックマウスをヒトAMDのモデル動物として確立することを目的として、昨年度までに作成したHtrA1wtトランスジェニックマウス、ARMS2wt、ARMS2mutトランスジェニックマウスを用いてレーザー誘導新生血管形成におけるHtrA1およびARMS2の影響について解析した。各群6匹、一眼球あたり8スポットにレーザーを照射し1週間後蛍光眼底観察をおこなったところ、野生型マウスと比較しARMS2mutトランスジェニックマウスのみが有意に新生血管が抑制されていた。さらに、眼球を摘出し、HE染色による形態観察をおこなったところ、レーザーが照射されていない部位は顕著な変化を見いだせなかったが、ARMS2mutトランスジェニックマウスの新生血管誘導部位は他のマウスと比べると新生血管が抑制される傾向にあることが確認できた。ゲノム上のHtrA1,ARMS2の部位が加齢性黄斑変性症の発症に強く関連することが分かっているが、未だその発症機構は明らかになっていない。今回本研究成果により、HtrA1あるいはARMS2の遺伝子変化が新生血管誘導に及ぼす影響を見出すことが出来た。
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