本研究では本邦での視覚障害の原因疾患として第4位をしめる加齢黄斑変性の臨床症状が遺伝的な素因、一塩基多型(SNP)によってどのような影響を受けるかを検討するものである。 まず基礎的なデータとして加齢黄斑変性の臨床像、治療経過についての検討を行い、加齢黄斑変性の一亜型であるポリープ状脈絡膜血管症において、造影検査で描出されるメッシュ状の血管所見が病変の再発と関連し経過観察上重要なこと(Eye 2011 in press)、および現在加齢黄斑変性に対する第一選択である抗VEGF療法を行っても、寛解が得られるのは全体の40%程度にすぎず、また一定の割合で脱落例が出ることを明らかにした(Euro J Ophth 2011 in press)。この結果は遺伝子解析を行う際のパラメーターの一つとして、また一般臨床上の知見として有用なものと考えられた。 遺伝子解析について、採取した検体は自施設で解析の予定であったが、研究代表者の京都大学への異動が内定したため京都大学に送付して行うこととした。施設の倫理委員会の承認をへて約200例で同意を得て採血を行い、京都大学他の検体とあわせ解析を行った。その結果、欧米人では加齢黄斑変性の発症に関与するとされるSERPING1遺伝子のSNPは日本人では明らかな影響を及ぼさないことを明らかにした。(Plos One 2011)この結果は加齢黄斑変性の臨床像に人種による遺伝的素因の違いが関与していることを支持しており、今後の研究デザインや結果の解釈のうえで重要な意味を持つと考えられた。
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