本研究は本邦での視覚障害の原因疾患として第4位をしめる加齢黄斑変性の臨床症状が遺伝的な素因、一塩基多型(SNP)によってどのような影響を受けるかを検討するものである。 加齢黄斑変性患者の臨床像、治療経過について、視力およびフルオレセイン、インドシアニングリーン蛍光眼底造影、光干渉断層計による網膜厚や視細胞層の構造のデータを収集した。また同意が得られた患者で末梢血からDNAを採取し、マイクロアレイにて一塩基多型領域の配列を同定し、結果を解析した。 加齢黄斑変性の病態において、光干渉断層計で得られる所見のうち、視細胞内節外節接合部や外境界膜の状態、高輝度点状所見の存在が視機能とよく相関し、特に外境界膜の所見は治療前後の変化が少ないことから、予後の予測に役立つことを示した。また硝子体のけん引がある場合に急速に病態が進行することがあることを報告した。 遺伝子解析では、1036名の患者と1201名の正常被験者の検体を用い、C2/CFBのrs547154とrs541862のSNPが、それぞれT、Cであると典型的加齢黄斑変性、またその亜型であるポリープ状脈絡膜血管症のどちらも発症が少ない、つまりこの多型が保護的に働いていることを示した。 これらの結果は、網膜断層像で見られる所見が網膜の客観的評価に使えること、加齢黄斑変性の臨床像に人種による遺伝的素因の違いが関与していることを支持しており、今後の研究デザインや結果の解釈のうえで重要な意味を持つと考えられた。
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