我々が新たに作製樹立した直腸肛門奇形100%発症マウス (Sd Skt/+ Skt double mutant mouse)を用いることにより、鎖肛の発生過程を解析し鎖肛発症のメカニズムを解明することをこの研究の目的としている。 胎生期各段階(9.5-13.5日)のSd Skt/+ Skt double mutantマウス胎仔をパラフィン包埋し8μm連続切片を作製しHE染色にて観察した。総排泄腔(cloaca)とcloacal plate、総排泄腔を前後に分ける尿直腸中隔(urerectal septum)の形成を時間的解析に解析したところ、胎生11.5-12.5日の本マウスにおいてcloacal plate背側の短縮がおきると同時に背側の間葉組織の肥厚がおきていることが分かった。またX-gal染色した上で観察したところ、形態異常を示している部位でのSktの発現を確認できた。 この結果から本マウスにおける鎖肛発生過程での形態的異常とその時期が判明した。また形態異常を示しているcloacal plate背側周囲でのSktの発現は、鎖肛発生にcloacal plate背側の短縮と間葉組織の肥厚が関与している可能性を示している。 次に、鎖肛発症のメカニズムに関与する分子を明らかにする目的で、当該時期、同部位周辺の組織から抽出したDNAをDNAマイクロアレイにて解析した結果、Hoxa13とHoxd13の発現上昇とCdx2の発現低下がみとめられた。In situ hybridization法では、Hoxd13は胎生9.5日に後腸内胚葉背側に発現、胎生10.5日に生殖結節で発現上昇していた。一方Cdx2は胎生9.5日にcloacal plate周辺組織で発現低下していた。 この結果から本マウスの鎖肛発症メカニズムにHoxa13とHoxd13、Cdx2の発現変動が関与していることが示唆された。
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