当研究室で以前より集積していた尿道下裂・性分化疾患(DSD)患者の検体に、本年度さらに39例を追加し、MAMLD1変異解析を行った。その結果、約200例の検体の中で、4例のナンセンス変異と1例のスプライシング部位変異を同定した。尿道下裂・XY DSD患者におけるMAMLD1変異の割合は、約2.5%であった。ナンセンス変異を有する3例では、乳児期から幼児期までの下垂体-性腺機能は概ね正常範囲で推移していたものの、学童期になって、その機能低下と精巣の微小石灰化が認められた。このことはMAMLD1が胎生期だけでなく、出生後の精巣機能にも影響を及ぼすことを示唆するものと考える。また、スプライシング部位変異におけるルシフェラーゼアッセイによる機能解析では、MAMLD1のHES3プロモーター領域に対する転写活性化能の低下は認められず、タンパク発現量の確認が必要であるものの、スプライシング部位の異常全てが、必ずしも機能の異常につながるわけではない可能性があることが分かった。 マウスライディッヒ腫瘍細胞株を用いたsiRNAによるMamld1発現抑制実験では、Mamld1の発現を抑制すると、培養上清中の17ハイドロキシプレグネノロン・17ハイドロキシプロゲステロンからテストステロンまでのステロイド代謝産物濃度が有意に減少した。そして、テストステロン産生酵素のうち、Cyp17a1のmRNA発現量が有意に減少すること、これに一致して、17-hydroxylase活性が低下していることを見出した。また、同じ細胞の発現パターンをマイクロアレイで解析し、Cyp17a1の発現低下を再現した。 以上のことから、MAMLD1/Mamld1は、精巣におけるCyp17a1の発現調節を介し、胎生期ばかりでなく、出生後のテストステロン産生にも関与することが示唆された。
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