リンパ浮腫はリンパ液が何らかの理由によって皮下組織に貯留する結果生じる疾患であり、不治の病として患者のQOLを著しく阻害し、時には生命を奪う恐れのある疾患とされてきた。多くは、悪性腫瘍(子宮癌、乳射線療法)や感染、外傷によるリンパ流の途絶・閉塞により発生する。術後に発生する頻度としては、乳癌手術後に10一30%、子宮後に12-40%である。国内でも約12万人の患者がいるといわれ、進行する浮腫と戦っている。これまでの問題点として(1)リンパ浮腫の確立された診断法がなく、治療開始時期が明確ではない。診断・治療開始時はすでに進行してしまっていることが多い。(2)リンパ浮腫の確立された治療法がなく、発症後は徐々に増悪し治ることがない。(3)リンパ節廓清はリンパ浮腫発生の高リスクであるが、予防的治療が行われていない。これらの問題解決のための初の試みとして、本研究ではICG蛍光リンパ管造影法を用いて次の課題に取り組んでいる。(1)リンパ浮腫の超早期診断法の確立。(2)リンパ浮腫の早期治療を行い、完治を目指す。(3)リンパ節廓清等による高リスク群と予防的治療の適応評価。これはリンパ浮腫治療に関わる初の試みであり、コレラの確率により多くのリンパ浮腫患者のQOLだけでなく、将来的には2次性リンパ浮腫の発症をゼロに抑えることが可能となる。本研究では、ICG検査を用いたリンパ浮腫早期診断法の確立及び、浮腫発症リスク群を見つけるべく、婦人科との連携を行った。婦人科領域リンパ節郭清患者19名に対して、術前、術後にICG蛍光リンパ管造影を行い、リンパ流の変化を追った。術直後はほぼ全例で陰部を中心とした軽度から中等度の浮腫を認めた。その後、術前ICGでの流れが良好であったものは浮腫の改善を認めた。しかし、術前ICGの流れが不良であったものは、術直後より著名な浮腫を認め、一旦は軽快するものの、その後浮腫の進行を認めた。これらの患者に対してはリンパ管静脈吻合術を施行し、良好な結果を得られた。また、術前のICGにてリンパ流不良なものと良好なものがあった。術前リンパ流不良なのはリンパ節郭清後効率でリンパ浮腫を発症すると予測されるようになった。これらは予防的リンパ管静脈吻合術の良い適応となる。
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