これまでにわれわれは新規の方法で組織を脱細胞化する技術を開発した(特許出願:特願2009-041827)。本方法を直径3mm程度の小口径血管に応用した結果、脱細胞化を認めたのみならず動物実験において腹部大動脈に移植したところ半年に渡って100%の開存を確認した。組織学的に評価を行った結果、内腔面に血管内皮細胞が定着し、さらにその内面に血管平滑筋細胞の層構築を認め、組織学的には完全な再生血管を得ることができた。今後、実用化に向け、本脱細胞化血管の物性および再生機序の解明、再生血管の生理機能の評価を行いたく、本研究を開始した。 本年度は脱細胞化された血管が保存できるのかを検討するために、まず、脱細胞化後の血管を脱イオン水で脱塩したのち、一旦、凍結乾燥を行った。これをPBSで水和したのちにラット腹部大動脈に移植を行った。3ヶ月の後に開存が確認された。また口径をさらに小さくするために総頸動脈(φ1mm)を脱細胞化し、これを移植したところ、開存が認められた。 更に、移植後3ヶ月の血管を採取し、ワイヤーミオグラフシステムで生理機能を確認したところ、ニトロプルシドナトリウムを添加すると弛緩する事が明らかとなった。 以上より、本脱細胞化血管は生理機能的にも、組織再生型人工血管であることが示された。
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