われわれが開発してきたティシューエンジニアリングチャンバーを用いて、人工脂肪弁を開発することを目的としている。過去の実験と比較検討するために、まず純粋に脂肪由来幹細胞(ASCs)がチャンバー内の組織構築に対する影響を判断するために予備実験を行った。 実験1. 浅大腿動静脈、コラーゲンスポンジをチャンバー内に導入し、control、ASCs(+)、FGF-2(+)の3群で4週後に構築された組織量の比較を行ったところ、ASCs群<control群<FGF-2との結果となった。 ASCs群では明らかに、組織構築が乏しく、ASCsがコラーゲンスポンジ内への血管新生を阻害していた。これはコラーゲンスポンジに播種したASCsが、スポンジ内の血管新生スペースを占拠し、チャンバー内の環境では有効な細胞材料として機能しないと考えられた。 ASCsには遊離脂肪移植時の生着促進効果が知られている。実験1の結果を踏まえ、チャンバー内でのASCsに細胞材料としてではなく増殖因子として、遊離脂肪への血管新生や生着の作用を実験2で検討を行った。 実験2. 浅大腿動静脈、コラーゲンスポンジ、2gの遊離脂肪をチャンバー内に導入し、control、ASCs(+)で4週後に脂肪組織の比較を行っている。まだnが少ないが、脂肪組織への血管新生、遊離脂肪の生着にASCs群での脂肪生着に良い効果が見られる。 今後FGF-2(+)群を加えn=7まで実験を行いその作用を検討し、よりよい人工脂肪弁の作成方法を構築する予定である。
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