これまでの研究から、tissue engineering chamberは細胞の増殖・分化を促進し、3次元の組織を再構築する有効な再生の場であることが明らかとなった。また、脂肪由来幹細胞(ASCs)の局所注入により、局所皮弁における皮弁生着域を拡大することが知られている。両者を併用し、より効率的な人工皮弁の作製のための研究を行った。 Japan White系の雄ウサギのソケイ部に移植したtissue engineering chamber内に、遊離脂肪+浅大腿動静脈および血管柄付き脂肪弁とともに10^8個の脂肪由来幹細胞を播種した。4週間後に採取して組織の検討を行った。 ASCsによる皮弁体積の増大、脂肪壊死の減少、脂肪由来幹細胞の脂肪への分化などの効果が期待された。しかし、遊離脂肪+大腿動静脈、血管柄付き脂肪弁で得られた皮弁は容積、脂肪壊死の程度、病理組織像においてControl群、ASCs付加群で有意差がなく、期待された効果が得られなかった。 このことより現状のtissue engineering chamber内の細胞環境では、有効なASCsの生着および生理活性を得ることが困難であることが分かった。 分化誘導されたASCsは筋肉内などの血流の豊富な組織内でのみ生着、組織構築が報告されている。ASCsの生着を妨げている最大の要因は低酸素状態であると考え、今後高濃度酸素環境下の研究が必要と考えている。
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