今回の研究では筋膜、脂肪、皮膚からなる複合組織(遊離鼠径皮弁)移植を、同種異系間にて行い、その際体外フォトフェレーシをおこなうことで移植後の拒絶反応を抑制できるかどうかを検討した。実験ではドナーであるBNラットから遊離鼠径皮弁を挙上し、これを宿主であるLEWラットに移植した。その後拒絶反応の程度を肉眼的、病理組織学的に行った。その際二つの実験グループを作成した。一つは体外フォトフェレーシスを行わなかったグループで、もう一つは体外フォトフェレーシスを行ったグループである。In vitroとして行ったリンパ球混合刺激試験ではこれら2グループ間の観察において、フォトフェレーシスを行ったグループの方が特異的膠原(BN)刺激に対するリンパ球増殖反応が抑制されていることが分かった。しかしin vivoの肉眼的、病理組織学的観察では2グループ間に優位な拒絶反応重症度の差は認められなかった。これらの結果を検討し、体外フォトフェレーシスは抗原特異的免疫寛容を導入する作用はあるが、それ単独では拒絶反応をin vivoで制御することは難しいと判断した。そこで、従来行われている免疫抑制法を併用してその効果を検討することとした。この際は前述の二つのグループを作成して、両グループにシクロスポリンAを4mg/day14日間皮下注射する方法を併用した。その結果in vitroの検討として行ったリンパ球混合刺激試験では最初の検討と同様に体外フォトフェレーシスにて抗原特異的免疫反応が抑制されることが分かった。in vivoとしての肉眼的、病理組織学的観察でも、二つのグループ間において、体外フォトフェレーシスを行ったグループの方が優位に拒絶反応が抑制される結果を得ることができた。今回得られた結果は、現在行われている臓器移植医療において体外フォトフェレーシスが移植後拒絶反応抑制に効果をしめす可能性を示唆しているものと思われる。
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