老化皮膚潰瘍モデルの中核をなすklothoマウスは高価である上、外的ストレスに非常に弱く、実験毎に購入・輸送した場合は死亡率が高く、実験は困難であった。そこで、まずはじめに安定したklothoホモマウスの供給を得るため、当施設にてklotho-F1ヘテロマウス雌雄よりなるコロニーを形成した。具体的にはklothoマウス供給元に繁殖の許可を得、環境を整えたケージ、施設を整備した。これにより十分なklothoホモマウスが得られるようになった。 次に老化皮膚潰瘍モデルを用いた創収縮能の調査を行った。従来はklothoマウスの皮膚に対する物理的な実験は困難とされていたが、当方では実験前からの体温調節やケージの準備、適正な麻酔薬濃度や手術時間の短縮などの手厚いケアを行い、不必要なストレスを抑えることで老化皮膚潰瘍モデルとして利用した。生後6週目のklothoホモ、klothoヘテロ、野生型(C57BU6)マウスを用い、イソフルレンでの吸入麻酔下に背部に径8mmの肉様膜に達する創を作成した。術後2日ごとにアクリル板を用いて直接トレースして計測し、スキャン、デジタル化し、画像処理ソフト(Adobe Photoshop CS5)にてピクセル数を計測した。結果的にklothoホモマウスは、他のマウスに比べて有意に治癒期間の遅延が認められた。また、術後2日、4日、7日目の創部を採取し、病理学的検索を行ったところ、klothoホモマウスの脆弱な真皮層や減少したコラーゲン量が確認できた。 今年度の実験を踏まえ、次年度はさらに創収縮遅延の原因の解析を行う予定である。
|