顔面神経麻痺の治療において、神経端側縫合を利用した治療が報告されてきているが、神経端側縫合の神経再生メカニズムは完全には解明されていない。神経端側縫合は、端々縫合に比べ、ドナー神経の犠牲が無い点で優れているが、力源としては劣っている。また、端側縫合ではドナー神経から側芽が萌出し、レシピエント神経側に伸長すると考えられているが、一つの神経細胞が異なる筋肉を支配している状態は認められていない。そこで、側芽からレシピエント神経側に伸長した神経線維が終末器官に到達し、機能し得るものは、ドナー神経本幹内の神経終末到達していなかった線維ではないかと考えた。つまり神経再生の程度は、端々縫合、端側縫合の縫合法による差ではなく、神経終末に到達していない神経線維の数に影響され、それが再生軸索の数に影響するのではないかと考えた。以上を検証するため、ラット交叉神経移植モデルを使用し、縫合法による神経再生を検討した。昨年はドナー神経を正中神経としていたが、より移植神経と太さの近い胸背神経をドナーとした交叉移植を行った。ドナー神経の中枢側、移植神経、レシピエント神経の末梢側について軸索の形成を病理学的に検討した。さらに縫合法をかえた群間での再生軸索数を計測した。また、移植後、胸背神経末梢にDiI、DiOを作用させ、神経再生の様式と、二重支配の有無についての検討を行った。血管柄付神経移植群はラットの旺盛な再生能力により、無血管移植との有意差を見いだせなかった。
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