平成22年の実験で新鮮遺体の下肢のリンパ管造影に成功し、その手法を引き続き使用してリンパ管を造影した下肢の検体数を15まで増やすことができた。実験の手法は平成23年までの手法を継続して行っている。下肢の浅層を走る集合リンパ管は大きく大伏在リンパ管と小伏在リンパ管に分類する事ができる。この走行パターンを次の1~5に分類する事ができた。以下に詳細を述べる。1、大伏在リンパ管が鼠径リンパ節に注ぐ。小伏在リンパ管は膝窩リンパ節に注ぎ、その後、輸出リンパ管が深部リンパ管に合流する。2、1と同様であるが、小伏在リンパ管から大伏在リンパ管への分岐がある。3、膝窩リンパ節からの輸出リンパ管が深部に至らず、浅鼠径リンパ節に合流する。4、3と同様であるが、小伏在リンパ管から大伏在リンパ管への分岐がある。5、1と同様であるが、膝窩周囲で大伏在リンパ管から膝窩リンパ節への分岐がある。 この知見は足に生じた皮膚悪性腫瘍の転移のメ カニズムを解明する手がかりとなる。さらには患者個人の生じた腫瘍の場所と1~5までのリンパ流のタイプがリンパ管シンチグラフィで把握されれば、必要となるリンパ節廓清の場所と範囲を決定する事ができる。これは下肢の悪性腫瘍の治療の際に非常に有用な知見となる。 さらに本年度はリンパ浮腫の患者のリンパシンチグラフィを解析した。その結果、一部の患者では小伏在リンパ管がリンパ浮腫の際にリンパ液の迂回路となっていることがわかった。本研究において小伏在リンパ管は深筋膜下を走行している事が判明していたため、小伏在リンパ管は大伏在リンパ管に比べてリンパ浮腫の際の局所の炎症に強く、迂回路となることが示された。これはリンパ浮腫の治療の際に有用な知見である。
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