治療困難な顔面神経麻痺の不全麻痺例に対し、舌下神経など別のMotor sourceからの再生軸索を端側神経縫合を用いて流入させ新たなNeural Networkを形成して表情筋の収縮を改善させるという治療法が報告されているが、その作用メカニズムについては不明な点も多く、検討の余地があると考えられる。 その再生神経の作用形態を評価するために、初年度は一部の運動神経軸索がYFP発色しそれぞれの軸索の走行が評価しやすいThy1-YFPH miceを用い、移植神経の両端を端側神経縫合で吻合するネットワークモデルの作成を脛骨神経と腓骨神経の間で行った。移植神経をあらかじめ脱髄して無蛍光にすることで、移植神経内をどのように再生軸索が走行するかの観察を行ったが、再生神経は移植神経の両端から相互に伸展し、その再生軸索も幼若なものが数多く交錯する形態をとっていた。再生神経の形態を明らかにすることを目的にしているが、神経軸索がYFPの単色であるため、幼若な再生神経が数多く交錯すると個々の軸索の起源やその走行を評価するのが困難であった。 現在、神経軸索が非常に多くの蛍光を発色するBrainbow miceを購入し、繁殖を行っている。そのマウスは全ての軸索が発色するものの、それぞれの軸索が100種類程度の異なる色を発色するため、個々の軸索の走行をより明確に観察出来る可能性がある。 今後、Brainbow miceを用いたモデルを作成することで、より個々の再生神経の形態を明らかにしていくとともに、実際にどれだけの神経が筋肉や皮膚といった神経終末に到達して作用しているかということを形態学的に評価していく予定である。
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