研究概要 |
三次元組織再生において、静水圧の負荷は細胞の分化・増殖に有用であることを示してきた。ヒト脂肪組織由来幹細胞を播種したコラーゲンスポンジに静水圧を付加して培養した軟骨再生を行ってきたが、本年度、スポンジの替わりにゲルを用いた軟骨再生を試みた。静水圧を負荷するバイオプロセッサーを用い、コラーゲンゲルに懸濁した脂肪組織由来幹細胞の潅流培養を試みた。1×10^6個のヒト脂肪組織由来幹細胞を、I型コラーゲン溶液に懸濁しパウチに入れ、細胞増殖培地(DMEM+10% FBS+1%ABAM)にて24時間培養した後、バイオプロセッサーでの灌流培養を行った。バイオリアクター内では軟骨分化誘導培地を用いた(DMEM+1%FBS+1%ABAM+10ng/ml TGF-beta1+1x10^<-7>molデキサメサゾン+50ug/mlアスコルビン酸+1mMピルビン酸ナトリウム+40ug/ml 1-プロリン)。静水圧は0-0.5MPa,0.5Hzの周期的負荷とし、潅流速度は0.1ml/min、37℃、3%O_2、5%CO_2と設定した。実験対照群として、同じバイオリアクター内で静水圧負荷を行わない大気圧群を設定した。計4週間培養し、1週ごとに組織学的解析・定量解析を行った。培養を開始してから2週間後より、両群ともにII型コラーゲンをはじめとする軟骨組織特異的な細胞外マトリックスの蓄積を認めたが、静水圧負荷群は大気圧群に比べて優位にその蓄積量が多かった。また、静水圧負荷群では細胞数の減少が認められなかったが、大気圧群では、培養開始後2週間で細胞数がピークに達し、その後減少した。ヒト脂肪組織由来幹細胞を用いた軟骨再生では、コラーゲンスポンジのみならずコラーゲンゲルも有用であり、さらに静水圧負荷が軟骨再生に重要であることが示唆された。
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