本研究は早期骨癒合症という石灰化が亢進する状態に対して、石灰化を制御する可能性を探索するものである。以前、テネイシンWが癒合直前の縫合部に発言していることを発見し、頭蓋冠骨芽細胞の成熟分化、すなわち石灰化に関与していると発表した。また培養細胞を用いたin vitroの実験でもそれを示唆する結果が出ていた。そうであれば、細胞外タンパクとして外部から供給することによる正負両方向性の石灰化制御の可能性を示すこととなると考えた。しかし、マウスを用いたin vivoの実験系においてテネイシンWの供給によって骨癒合には大きな変化が見られなかった。このため、その他の骨癒合に関与するといわれているタンパクを利用して同じ実験系での実験を継続した。以下にその概要を示す。 実験1:テネイシンWをマウス頭蓋冠縫合部に作用させて縫合が癒合(閉鎖)するかどうか検討する。 結果:外科的手術によってテネイシンW合成タンパクを生後1週~3週のマウスの矢状縫合に作用させてその効果を検討したが、縫合は閉鎖し、コントロール群に比し閉鎖時期に優位差は見られなかった。手術後の縫合の状態は、骨格の透明標本を用いた肉眼的観察及び脱灰した標本より切片を作製し、組織学的観察を行った。そこで、その他の骨癒合に関与するといわれているタンパクを利用して同じ実験系での実験を継続したところ、FGF2を投与した群で閉鎖が遅延する傾向が見られた。 実験2:実験1における遺伝子発現の変化を検討する。 結果:縫合の閉鎖段階に合わせてin situ hybridizationを行い、骨芽細胞の分化に関係する遺伝子、骨基質タンパクの遺伝子の発現を検討したが、縫合閉鎖に伴いテネイシンの発現は消失した。
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