ラットより採取した皮膚線維芽細胞を用いて各種閉鎖陰圧環境下において動態変化を調査した。グループ1は大気圧、グループ2は100cmH_2Oの持続陰圧、グループ3は100cmH_2Oの1分吸引1分休止の間欠的陰圧、グループ4は100cmH_2Oの3分吸引3分休止の間欠的陰圧で培養した。結果、細胞増殖に関してはグループ4、3、2、1の順に増殖能を示した。遊走に関してはグループ3、4、2、1の順に遊走能を示した。コラーゲンコントラクションに関してはグループ2、3、4、1の順に収縮を示した。これらの結果から陰圧環境下の方が大気圧より創傷治癒を促進する可能性が示唆された。ただし、in vitroでの結果がin vivoで反映されるとは限らず、これらの結果を今後in vivoでも検討する必要があると思われた。 次に、局所閉鎖陰圧療法時は創を閉鎖することで感染の増悪が懸念されるが、抗菌性のある創傷被覆材を併用することでそのリスクを減らすことが予想される。そこで各創傷被覆材の抗菌性について調査した。日常の創傷処置で用いられる創傷被覆材を用いて液体LB培地中の大腸菌に対する抗菌力を調査した。結果、ゲーベンクリーム、アクアセルAgが速効性があり、強い抗菌力を持ち、持続性を認めた。次にゲンタシン軟膏、ユーパスタ軟膏、ヨードホルムガーゼの順で抗菌力を認めた。また各創傷被覆材の浸透性による抗菌力も調査した。LB寒天培地の内部も含めて全体に大腸菌を培養し、寒天培地表面に創傷被覆材を貼付することで浸透による抗菌力を評価した。結果、ヨードホルムガーゼが一番強い浸透性と抗菌力を持っていた。次にゲーベンクリーム、アクアセルAg、ゲンタシン軟膏、ユーパスタ軟膏の順で浸透性による抗菌力を示した。今後、ラットの後根神経節細胞および褐色細胞の株化細胞であるPC12cellを用いて神経細胞の閉鎖陰圧環境下での動態変化と線維芽細胞との相互作用を検討していく予定である。
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