研究概要 |
申請者は外傷および脳動脈の閉塞や破綻に起因する脳卒中など急性脳障害における初期細胞内での脂質代謝酵素群シグナル伝達の解明を目的として、初年度は以下の研究を行った。脂質代謝酵素の一つであるジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)ζが一過性脳虚血刺激後、スライス培養、初代神経細胞でも核外輸送される。この機構を解明するために、輸送単体である種々のimportinおよびCrm1との結合解析を生化学的に行い、DGKζの核-細胞質間輸送パートナーが少なくともQip1,NPI1により核内輸送され、Crm1依存的に核外輸送されることが明らかとなった。また結合蛋白因子を探索した結果、細胞質にてNucleosome assembly protein(NAP)1-L1及び-L4と細胞質で結合し、NAP大量発現時にはDGKζの核内輸送担体との結合が阻害されることで細胞質に留まることを明らかにした。DGKζは虚血処理後海馬ニューロンにおいて速やかに核内から消失し、その後細胞質にてタンパク質の分解が起きることを明らかにしてきたが、DGKζの発現が減少した神経細胞ではその後サイクリンDの発現上昇が確認された。このタンパク質分解はHEK293などを用いた発現系や初代ニューロンを用いた系でも認められ、グルタミン酸処理において引き起こされること、核外輸送阻害により減少することを明らかにした。
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