研究課題/領域番号 |
22791745
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
岡田 雅司 山形大学, 医学部, 助教 (70512614)
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キーワード | DGK / 虚血 / シグナル伝達 / phagocytosis / リン脂質代謝酵素 / IQGAP / Rac1 / macrophage |
研究概要 |
申請者は脳動脈の閉塞や恒常性の破綻に起因する脳卒中など、急性脳障害における細胞内での初期脂質代謝酵素群シグナル伝達の解明を目的として、初年度より引き続き以下の研究を行った。リン脂質代謝酵素の一つであるジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)ζが虚血処理後海馬ニューロンにおいて速やかに核内から消失し、その後細胞質にてタンパク質の分解が起きることを明らかにしてきたが、この現象はマウス海馬を用いた癩痛モデルにおいても同様にDGKζの核-細胞質間輸送と細胞質における分解が確認された。またDGKζノックアウトマウス由来神経細胞を用いて興奮毒性処理を行うと、野生型に比べ細胞死が誘導されやすくなることを見出した。個体においても、DGKζノックアウトマウスはカイニン酸処理における癩痛誘導が引き起こされやすいことも明らかにし、現在、国際誌に論文を投稿中である。 初年度に行ったDGKζ結合タンパクを探索した結果、新たに低分子量Gタンパク質であるRacl/Cdc42のGAPタンパクの一つであるIQGAPIを同定した。様々な刺激実験を行った結果、マクロファージにおいて最近由来内毒素であるリポポリサッカライド(LPS)によってこのDGKζ-IQGAPl複合体形成が惹起されること、DGKζ-IQGAPI結合依存的にLPSによるRaclの活性化が誘導され、特にファゴサイトーシスを制御していることを明らかにし、国際誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞を用いた機能解析やノックアウトマウスを用いた性状解析がよく進み、一定の結果を得ていること、ユビキチンリガーゼの同定には至っていないが、その時に得たその他の結合タンパク質とDGKζの結合様式やその生理的な意義などが進み、それらを国際誌に発表するに至っていることから、今のところ計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、DGKζの虚血性神経細胞死に関する論文発表に専念する。 また、ユビキチンリガーゼの同定を行うために、さらなる結合タンパク質の探索を、条件を変更して行う。 例えば架橋剤を用いて弱く結合している因子も免疫沈降してくる、もしくは虚血脳の細胞抽出液を用いる、など。さらにいくつか虚血時に活性が上がることが知られているユビキチンリガーゼが報告されていることから、それらの遺伝子をクローニングし、各々のユビキチンリガーゼ活性がDGKζを基質となし得るか確認していく。
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