本研究の目的は、次世代の新規心筋再生療法の候補として、「間質幹細胞を重症不全心筋へ動員するケモカィンSDF-1αにより、重症左室不全症例の心筋収縮力回復が可能かどうかを明ら-かにする」ことである。SDF-1α遺伝子の作製:pcDNA3プラスミドにヒトSDF-1α遺伝子を組み込んだものを用いた。SDF-1αの心筋への投与:SDF-1α遺伝子プラスミドあるいはルシフェラーゼ遺伝子プラスミド300μg/kgを実験動物の心筋へ筋注し、実験を行った。下肢筋肉への遺伝子導入時にはエレクトロポレーションを併用し、導入効率の向上を図った。心筋に対しては新たにプラスミド投与時の組織でのSDF-1α発現濃度を測定し、プラスミドの至適投与量を決定した。全身細胞でLacZを常時発現しているROSA26マウスの骨髄を野生型マウスへ移植した。これにより骨髄細胞のみでLacZを発現するマウスモデルの作製に成功した。このマウスに別の標識を行ったmesenchymal stem cell (MSC)を投与する事によって、心筋細胞、骨髄細胞、投与幹細胞はそれぞれ別々に標識されることとなり、各要素の関与を明らかにした。重症左室不全モデルの作製:上記マウスの左前下行枝近位部を結紮し、急性心筋梗塞を作製し、安定した心不全モデルの作製に成功した。SDF-1αによるMSC動員を確認すべく、SDF-1α蛋白を含有させたmatrigelを皮下へ植え込み、MSCを静注し、matrigelへのMSC遊走を確認した。また、matrige1内のSDF-1α濃度の至適量を検討し、遺伝子の至適導入量の決定を行った。重症左室不全モデルの解析:重症左室不全マウスへSDF-1α遺伝子導入を行い、SDF-1αによって、1)心筋組織へ動員されること、2)心筋への分化が行われること、3)心機能が改善すること、免疫、生化学的手法によりを明らかにした。
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