22年度はマウスを用いたCecal ligation and puncture (CLP)による敗血症モデルを作成した上で健常マウスおよび敗血症モデルマウスに人工呼吸を施行し、一回換気量を6ml/kg、12ml/kg、20ml/kgの3段階に設定した人工呼吸による肺損傷の程度を組織学的評価、IL-1β、TNF-α、IL-8、IL-6などの炎症性サイトカイン発現の定量および肺組織のATP測定により評価を行い、人工呼吸そのものによる肺損傷および背景に敗血症のある肺での人工呼吸による肺損傷の程度と炎症性サイトカインおよび肺組織ATPの関連性の調査を行う予定であった。人工呼吸はマウスに全身麻酔を施した後、頚部の皮膚を切開し気管を露出させた上で18Gの血管内留置針を用いてプラスチックカニューレを挿入し、速やかに1時間の人工呼吸を開始した。予備的実験において、実験前の予想以上に、人工呼吸中に死亡に至るマウスが多く、予想に反して低容量の一回換気量で人工呼吸を行った健常マウスにおいても気胸によって死亡に至るものが存在した。これは人工呼吸中に自発呼吸が出現し人工呼吸器で想定される以上の圧が負荷されたためであると考え、筋弛緩薬の併用を行った。また人工呼吸中には酸素投与を行っておらず、低酸素血症が原因になっている可能性もあると考えられるため、現在、人工呼吸中の血圧測定および血液ガス分析をが行えるような動脈へのカニュレーションを行う実験モデルの作成・確立を急いでいるところである。また組織学的評価において、CLPによる敗血症モデルマウスの組織に個体間で大きな差異を認めたため、より均一な敗血症モデルの作成が必要であると考えている。しかし、肺組織中の各種炎症性サイトカインの発現定量およびATP測定を行う段階には至っておらず、今年度は速やかにこれらの課題を行っていく予定である。
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