23年度はLPS腹腔内投与により作成したsepsisモデルマウスに人工呼吸を施し、その際の人工換気容量と肺組織中ATPおよび血中炎症性サイトカインの関連性を健常マウスとの比較を行い解析することにより、sepsisモデルマウスが人工呼吸による病態の悪化をきたす人工換気設定および肺組織ATP濃度を明らかにした上で、肺損傷を惹起する設定での人工呼吸を施したsepsisモデルマウスにアデノシンまたはATP分解酵素アピラーゼを経気道的に投与し、肺損傷軽減効果および全身性の炎症軽減効果の有無を調査する予定であった。1時間の人工呼吸後に採取した肺の組織学的評価ではsepsisモデルマウスと健常マウスに差異を認めたが、ATP濃度および炎症性サイトカイン発現については、実験前の予想以上に個体間のばらつきが大きく統計学的に有意差を得ることが出来なかった。また、sepsisモデルマウスにおけるアデノシン投与による肺損傷軽減効果については、経気道的投与後の人工呼吸中に死亡に至るマウスが多く、投与自体の侵襲が大きい可能性が考えられたため、現在、投与経路の変更も含めて安定した投与方法の確立を急いでいるところである。 さらに、臨床研究により集中治療室においてALI/ARDSを合併し人工呼吸を要するsepsis患者の呼気濃縮液中のATP濃度を経時的に測定し、肺損傷の改善・悪化および人工呼吸療法施行期間との関連性を解析する予定であったが、これについては、ALI/ARDS患者は呼吸器回路を積極的に加湿している場合も多く未だ着手できていない状況である。
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