研究概要 |
我々の研究グループにおいて、これまで神経幹細胞や骨髄間質細胞を保持する人工マトリクスとして、アルギン酸ゲルを用いてきた。神経損傷後の細胞の変質に注目し、腫瘍壊死因子(TNF: Tumor Necrosis Factor)を特異的に抑制するペプチドを開発し(K.kajiwara, et al., BAA. 1699,131-137(2004))、人口コラーゲンに添加した。このコラーゲンと神経幹細胞を脊髄損傷部に移植し、細胞の維持と分化に対する効果を検証する。 昨年度はまず、安定した脊甑損傷モデルを作成する実験を行った。脊髄半切モデルにて、安定した術後経過を得られるようになったため、術後12週まての観察期間を設定したが、12週まで生存させるには尿路感染と考えられる合併症の為、困難を要した。 移植後2週、4週にて脊髄を摘出し、標本を作製。ヘマトキシリン・エオジン染色を行い、組織の観察を行った。一部のモデルにおいては、移植片周囲に空洞を形成するものも認めたが、組織とコラーゲンとの親和性に関しては良好であることが観察された。 また、ホルマリン固定後に凍結切片を作成し、免疫組織染色を行い評価をおこなった。あきらかなグリア瘢痕は形成せず、移植片への軸索の伸展を認め、再生の場として有用であることが確認された。 BBBによる,後肢運動機能評価においては,12週においても経過上、あきらかな改善は認められなかった。
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