研究概要 |
本研究は敗血症に合併する心不全の病態の解明と、細胞内シグナルであるJak2-STAT3経路と、その制御因子であるSuppressor of cytokine signaling(SOCS3)による心不全の抑制機序の解明を行う。Wild typeマウス(Balb/c)、心筋特異的SOCS欠損マウス(以後SOCS3CKOマウス)にLPSを腹腔内投与を行い、SOCS3CKOマウスがwild typeより生存率の改善と心機能低下の抑制を認めた。SOCS3CKOマウスはwild typeマウスと比較しLPS投与後の血清CK-MBの上昇が抑制されていた。Plt、ALTの変化は両群で有意差がなく、生存率の改善は心筋障害の抑制によると示唆された。両群ともLPS投与後の心筋組織をHE染色を行ったが、両群ともに炎症性細胞の浸潤を認めなかった。両群ともLPS投与後のPlt数の減少、ALT上昇の程度は変わらなかったが、LPS投与後の心機能低下は局所的な要因ではなくサイトカインなどによる心収縮抑制が疑われた。LPS投与3時間後のwild typeマウスの心筋組織のRT-PCRを施行し、心筋内においてGM-CSFやIL-6、cardiotrophin1,IL-17などのJAK-STAT系シグナルを活性化させるサイトカインの分泌が見られた。wild typeマウスではLPS投与1時間後よりp-STAT3の発現の亢進が見られたが、同時期よりSOCS3の発現が見られ、p-STAT3の活性化はLPS投与6時間後には抑制されていた。SOCS3CKOマウスにおいてはLPS投与後のp-STAT3の活性化が増強し投与6時間後も持続していた。SOCS3CKOマウスではwild typeマウスと比較しLPS投与6時間後のcleaved caspase3の発現が減弱しており、Bcl-2の発現が亢進していた。SOCS3CKOマウスではwild typeマウスと比較しLPS投与6時間後でのcytochromeCのcytosolへのreleaseを抑制していた。以上より心筋細胞でのSOCS3の欠失はLPS投与によるミトコンドリア障害を抑制することが示唆された。今後はミトコンドリア障害抑制の機序を研究していく予定である。
|