研究課題
骨芽細胞は骨細胞へと最終分化する過程で、アポトーシスで数が減少すると考えられている。本研究では、骨芽細胞のアポトーシスを抑制し骨量を増加させる目的で、アポトーシス抑制遺伝子Bcl-X_Lに着目し、骨芽細胞特異的Bcl-X_L過剰発現マウスと骨芽細胞特異的Bcl-X_Lコンディショナルノックアウトマウスを用い、Bcl-X_Lの骨形成・維持における役割を明らかにした。現在、当講座において、骨芽細胞特異的Bcl-X_L過剰発現マウスの弱ラインと強ライン(以下、Bcl-X_L tg(L),Bcl-X_L tg(H)と表記する)が樹立されているが、本年度の解析ではtg(H)の新生仔頭蓋冠由来初代骨芽細胞の解析をメインで行った。またBcl-X_Lコンディショナルノックアウトマウス(以下、Bcl-X_L cKOと表記する)は、Bcl-X_L flox/floxと骨芽細胞特異的Cre過剰発現マウスを交配させることによって得るが、産まれてくる新生仔のうちcKOマウスの割合が低い上にCreリコンビナーゼの発現が低かったため、Bcl-X_Lを欠損した十分な数の新生仔頭蓋冠由来初代骨芽細胞を得ることが難しかった。そのため、flox/floxマウスの新生仔頭蓋冠由来初代骨芽細胞にアデノウィルスもしくはレトロウィルスを用いてCreリコンビナーゼを発現させることにより、野生型に対してBcl-X_Lの発現レベルが3割程の細胞を得た。tg(H)の新生仔頭蓋冠由来初代骨芽細胞は培養下で分化誘導を行うと、野生型に対して、分化誘導開始から3日後でアルカリフォスファターゼの染色性が若干亢進しており、1週間後にKossa染色を行うと石灰化結節が多かった。この結果より、培養下ではtg(H)の骨芽細胞はアポトーシスが抑制されることによって細胞密度が亢進し、分化が促進することが考えられた。flox/floxマウスの新生仔頭蓋冠由来初代骨芽細胞にCreリコンビナーゼを発現させ、培養下で観察を行うと、アルカリフォスファターゼの染色性が低下し、Kossa染色による石灰化結節の数も減少していた。これらの結果から、培養条件下ではBcl-X_Lの発現の多寡により骨芽細胞の分化に影響が出ることが認められた。
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