研究課題
歯根形成で見られるHertwig上皮鞘(HERS)断裂のメカニズムには未だ多くの議論が残っている。われわれは、Rhoタンパク下流のエフェクター分子ROCKの抑制が、HERS由来培養細胞に上皮-間葉転換(EMT)を引き起こすことを見いだした。そこで,本研究では、in vitroの現象が生体内でも実際に起きているかを検証する目的で,新規リアルタイムイメージング法を用いたHERSの細胞動態の観察と、Rhoシグナルの機能獲得実験と機能喪失実験を組み合わせ、HERS断裂とEMT、さらにそれに関わるRhoシグナルの役割の詳細を明らかにすることを計画した。本年度研究成果1.GFPマウスの歯胚組織を薄切培養し、HERS形成をリアルタイムで観察する方法を確立した。また、器官培養した歯胚の外エナメル上皮細胞にDiIを打ち込み、HERS形成時における外エナメル上皮の細胞の動きをリアルタイムで観察する系を確立した。その結果、細胞分裂は内エナメル上皮細胞に比べ、外エナメル上皮細胞で活発に行われ、外エナメル上皮細胞がHERS形成とともに歯根方向に移動していく様をリアルタイムで捕らえることに成功した。2.RhoシグナリングはHGFによって制御されていることが報告されているため、われわれは歯根伸張におけるHGFの作用を検討した。HGFレセプターはエナメル上皮細胞とHERS細胞で発現が認められ、HGFは器官培養したマウス臼歯歯根、腎被膜移植した臼歯歯根の伸張と、培養HERS細胞の増殖を増強させた。またHGFのHERSにおける細胞増殖効果は、内エナメル上皮細胞にくらべ外エナメル上皮細胞で顕著に見られ、その効果はHGF中和抗体によって抑制された。これらの結果は2012年にJournal of Periodontal Researchに発表された。
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