研究概要 |
ヒト口腔扁平上皮癌における遺伝子解析と癌幹細胞マーカーの同定を目的とし、ヒト口腔扁平上皮癌培養細胞株をもちいてフローサイトメーターにより幹細胞の分離に用いられるSP分画を行った。その結果、Tosca23S,24,55培養細胞株においてSP細胞の含有率はそれぞれ19.6%、4%、0.1%であった。このうち、SP細胞含有率が高かったTosca23S細胞を用い以下の方法でヒト口腔扁平上皮癌における癌幹細胞マーカーの検討を行った。 1.Tosca23S培養細胞株をN2supplement、10ng/mLFGF,EGF添加無血清培地で培養(Tosca23sN2+)した結果、培養開始から2週目より幹細胞特有の形態であるsphere形成が認められた。 2.4週間培養した幹細胞様細胞であるTosca23sN2+についてマイクロアレイ解析を行った結果、毛包幹細胞マーカーのひとつと考えられているKRT34、間葉系幹細胞マーカーで知られるCD73が見いだされた。 3.頭頚部腫瘍における幹細胞マーカーと考えられているCD44、CD24、CD133の発現についてreal-timePCR解析を行った結果、Tosca23sN2+細胞においてCD44、CD133の発現は増強しCD24においては発現の減弱がみられた。 4.免疫組織学的検討の結果CD73,KRT34は上皮異形性や浸潤癌の増殖の強いところに局在がみられ高発現していることが見出された。 以上の結果よりCD73,KRT34は口腔扁平上皮癌癌幹細胞マーカーの一つとなりえ、癌細胞の浸潤増殖能を判断するマーカーと成り得る事が判明した。さらにこの遺伝子の高発現は癌に特徴的と考えられることから上皮異形性における癌との境界を判定する1つの基準と成り得る事が示唆された。
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