研究概要 |
序論:骨粗鬆症は高齢者人口の増加が進行するなかで罹患者が増加しており,その予防と治療の重要性が増している。しかしながら,現在の医療では,薬物を使用しても骨量の維持が精一杯であり,青壮年期に骨量を増加させることは困難な状況である。そこで,本研究では,骨粗鬆症や骨形成不全症などの治療および予防への応用を目的とし,トリプトファン誘導体を用いた骨芽細胞分化促進方法の確立とその作用機構の解明を目指す。 方法:ラット頭蓋冠由来の未分化間葉系幹細胞(C26)に骨芽細胞分化誘導サイトカインであるBMP-2を作用させ,骨芽細胞へ分化誘導するとともに,さまざまなタイミングでトリプトファン誘導体を培養系に添加し,その後の骨芽細胞分化に対する影響を検討した。骨芽細胞分化の指標として次の3点について解析を行った。1.石灰化物の形成(方法:Alizarin染色,沈着カルシウムの定量) 2.Alkaline phosphatase (ALP)活性(方法:p-nitrophenyl phosphateを基質とした定量) 3.骨基質タンパク,関連転写因子の発現量(方法:real time RT-PCR,Western blotting)。 結果:トリプトファン誘導体を培養の初期(培養0日目~6日目)に作用させた場合には,石灰化物の形成やALP活性が抑制され,培養後期(培養9日目~12日目)に作用させた場合には,BMP-2を単独で作用させたときよりも顕著に石灰化物の形成やALP活性が増加した。これらの結果から,トリプトファン誘導の骨芽細胞分化に対する作用効果は作用させる細胞の分化レベルに大きく依存すると考えられる。
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